「耐震補強は意味がない」言われる5つの理由・「意味がある」5つの理由│耐震補強以外の地震対策も紹介
「耐震補強は意味がない」
こうした指摘を見かけることがあります。
地震についてのニュースや記事を見るたびに、「自宅の耐震性は大丈夫だろうか」「耐震対策を考えないと」と不安に感じます。
そこで自宅の耐震性を高める方法を調べると「耐震補強」が選択肢に上がります。
しかし「耐震補強は意味がない」という指摘を見ると、効果が無いならやっても意味がないとも思ってしまいます。
そこで本記事では、本当に耐震補強は意味がないのか、そもそも耐震補強とはどういった対策なのか解説します。
・「耐震補強は意味がない」と指摘される理由が分かります。
・耐震補強にしっかり意味がある理由が分かります。
・耐震補強以外にもある効果的な地震対策についても紹介します。
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目次
耐震補強とはどんな工事なの?
はじめに、耐震補強とはどういった工事を指すのか確認しましょう。
東京都耐震ポータルサイトでは、耐震改修(耐震補強)について、木造住宅の場合の例として以下の4つの方法を紹介しています。
基礎の補強
基礎の補強は既設の基礎の横にコンクリートを増し打ちして、基礎を補強する工事を指します。
接合部の補強
接合部の補強は基礎と木部、柱と梁など、木材同士がつながっている箇所に金具を設置して、建材の破断や引き抜きを防ぐ工事を指します。
耐力壁を増やす補強
耐力壁(地震の発生時に揺れの力に抵抗する壁)を増やす補強は、耐力壁を増やすことで、地震に抵抗する壁の量を増やす対策です。
屋根の軽量化
屋根の軽量化は、屋根を軽くすることで揺れの力を抑える作業です。
屋根が重いほど地震による揺れのエネルギーは大きくなります。
こうした工事が木造住宅における耐震補強と言われるものです。
>関連コラム 住みながらできる木造住宅の耐震補強工事とは|内容や注意点を解説
耐震補強が「意味がない」と指摘される5つの理由
では、耐震補強に「意味がない」と指摘されるのはどうしてなのでしょうか。
以下の5つの理由を確認しましょう。
耐震補強の目的と手段が合わない場合があるから
1つ目の理由は、耐震補強の目的と手段が合わない場合があるからです。
よくある勘違いのひとつに、耐震補強をした結果、地震による揺れを抑えられると期待するものがあります。
しかし耐震補強はあくまで「住宅の倒壊を防ぐもの」であり、揺れを抑えられるものではありません。
このように耐震補強の目的と結果が合っていない場合は、「意味がない」と指摘されるのは当然です。
繰り返し発生する地震にも対応でき、新築・リフォームを問わず設置可能な制震ダンパーは多くの住宅においての最適解です。
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耐震補強の効果を実感できないから
2つ目の理由は、耐震補強の効果を実感できないからです。
耐震補強は、工事を行っても日常生活に変化がある訳ではありません。
また、地震を受けたときにも、耐震補強を行った前後の被害の状況を比較はできませんので、耐震補強の効果を実感できないことも「意味がない」とされる理由です。
新耐震基準で建てていて補強は不要と考えられるから
3つ目の理由は、新耐震基準に従って建てていることから、耐震補強は不要と考えるからです。
過去、大きな地震を受けるたびに日本の建築基準法は変わり、より安全な家になるよう改正が繰り返されてきました。
現行の基準では家を建てるために「耐震等級1」を満たす必要があります。
耐震等級1でも震度6強~7クラスの地震で倒壊しない強度は期待できることも耐震補強は不要と指摘される理由です。
ただし、過去の地震後の被災状況のデータを見ると、耐震等級1の家(建築基準法レベル)と耐震等級3の家とでは倒壊や損傷の割合が変わります。
こうした調査結果を見る限り、現行の基準を満たすことに加えて、耐震補強を行うメリットはあると考えられます。
耐震リフォーム詐欺の話を聞いたから
4つ目の理由は、耐震補強に関する詐欺があると聞いたからです。
耐震補強は、間取りの変更やキッチンなど設備のリフォームと異なり、工事前後での変化が分かりづらく悪徳業者による被害が増えている分野でもあります。
>参考リンク:日本耐震診断協会 詐欺に騙されない! 耐震診断義務の正しい知識
ニュースなどでも報じられることがあり「意味のない耐震補強を勧めている」と誤解されることもあります。
しかし熊本地震のデータなどでも分かるとおり、適切な耐震補強を施して耐震性を高めた住まいでは、倒壊などの危険性を抑えることが期待できます。
弊社のコラムなどを見て、地震・耐震について勉強した上で、適切な施工業者に依頼しましょう。
いくら強くしても倒壊するときは倒壊すると思われるから
5つ目の理由は、耐震補強を行っても倒壊するときは倒壊すると思われるからです。
耐震等級3の住まいやリフォームで耐震補強を行った住まいでも、地盤や建物の構造によっては倒壊・損壊する可能性は否定できません。
一方で、耐震補強を施すことで、地震によって倒壊・損壊する可能性が減ることは間違いありませんので、地震に対する不安を抱えている方は耐震補強を検討してみましょう。
自治体によっては耐震診断を無料で受けられるよう補助金を設けている場合もありますので、制度を活用して住まいの状態の確認だけでも行うことをおすすめします。
>関連コラム 「耐震診断、費用はどれくらい?」耐震診断を行う理由や流れも解説
「制震」「免震」など、地震の揺れを減衰する・伝えない技術もありますので利用を検討しましょう。
中でも「制震」は費用を抑えつつ地震の揺れを抑えられますので、多くの方におすすめできます。
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耐震補強に「意味がある」3つの理由
ここまで耐震補強に「意味がない」と指摘される理由を紹介しましたが、ここからは耐震補強に「意味がある」理由を解説します。
建物の現在の状態を確認できるから
耐震補強で自宅の耐震性を高めることに「意味がある」1つ目の理由は、建物の現在の状態を確認できることです。
耐震補強を行う際には、必ず建物の状態や地盤など、現時点での耐震性の評価が行われます。
このとき床下や天井裏など、壁などを取り壊さなくても進入できる場所の状態確認も行いますので、建物の健康状態を把握できます。
もしかするとシロアリの食害に遭っていたり、木材腐朽菌が繁殖して柱や梁の強度が損なわれているかもしれません。
こうした建物の状態を専門家に見てもらい、評価してもらえる点は大きなメリットです。
>関連コラム is値って?|耐震診断の必要性と評価の基準を知っておこう|なぜ耐震診断?
強度アップのほか軽量化も行えるから
耐震補強のメニューの中には、屋根材の葺き替えによる軽量化も含まれます。
地震による揺れは、重量が大きいほど、高い位置にあるほど、エネルギーが大きくなります。
瓦屋根など重たい屋根材を、軽量瓦やガルバリウム鋼板など軽い屋根材に変更する選択肢を取ることで耐震性の向上を図れます。
耐震性の高い住まいは実際に倒れていないから
最後に、耐震性の高い住まいほど大きな地震で倒壊していない実績があるからです。
掲載した熊本地震の被害状況のとおり、耐震等級3を取得した耐震性能が高い家は一般の家と比べて倒壊・損壊の割合は小さくなります。
耐震補強を行うことで、地震の揺れを受けても倒壊しない住まいになることを期待できます。
耐震補強以外におすすめの地震対策
記事の終わりに、耐震補強以外にも検討できる地震対策についてお伝えします。
制震:地震の揺れを吸収する
1つ目の方法は制震ダンパーの追加です。
制震ダンパーは耐震とは異なり、地震の揺れを装置内部に吸収することで建物への負担を減らす効果を持っています。
壁の一部を切り取り柱と梁に取り付けるなど、施工範囲が小さく施工費用を抑えられる点もメリットです。
耐震補強と同時に施工することで手間を省くこともできますので、耐震と制震をセットで検討してもよいでしょう。
免震:地震の揺れを家に伝えない
2つ目の方法は免震装置の導入です。
免震装置は、積層ゴムなど免震効果を持つ部材を建物本体と基礎の間に入れる工法です。
地震の揺れを建物・室内に伝えづらくする効果は最も高いですので、地震に不安を感じる方は利用を検討してみましょう。
なお、現在お住まいの家に免震装置を取り付ける場合は、建物自体をジャッキアップするなど大規模な工事が必要になる可能性がありますので、高額な費用がかかる点には注意が必要です。
まとめ│耐震補強で地震に強い家づくりを
「耐震補強は意味がない」
こうした指摘について、どうして意味がないと言われるようになったのか5つの理由と、実は耐震補強には大きなメリットがあるという話題について解説しました。
耐震補強は行っても日々の生活が便利になる訳ではなく、効果を実感しづらい地震対策ではあります。
しかし地震後の被害状況を示すデータを見ても分かるとおり、建物の倒壊・損壊を防ぐ効果が期待できます。
地震に対して不安を感じている方は、ぜひ耐震補強を行いましょう。
また、さらに高い耐震性を求める方は、「制震」「免震」といった対策も検討することをおすすめします。
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