【異常震域】とはどんな地震?過去事例と気を付けること|巨大地震との関係も解説
地震に関するニュースや情報が飛び交う昨今、皆さんは『異常震域』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
実は異常震域というワードは、約1年前にあたる2022年11月に三重県南東沖を震源とする地震が発生した際にSNSでトレンド入りしました。
その一方で、「異常」という響きから恐ろしいイメージが先行し、異常震域とはどういうものなのか、何が異常なのかなど詳しいことはあまり知られていません。
そこでこの記事では『異常震域』とは何か、気を付けなければならない点はあるのかといった特徴や注意点について解説するとともに、懸念されている巨大地震との関連や、異常震域による過去の事例もご紹介します。
・異常震域とは何か、気を付けるべき点は何かがわかります。
・過去にあった異常震域の事例を知ることができます。
・巨大地震との関連性がわかります。
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目次
異常震域とは?
異常震域とは、震源に近い場所よりも遠く離れた場所の方が強く揺れる現象のことを言います。
通常、地震の揺れは震源に近い場所ほど強く、遠い場所ほど弱くなります。
しかし震源が非常に深く、地下の深い場所で発生する深発地震の場合、震源の真上はほとんど揺れず、震源から遠く離れた場所の方が強く揺れる場合があります。
このように震度を感じる震域が「通常とは異なる」ため、異常震域と呼ばれています。
「異常」という言葉が付くとめったに起きないことのように感じますが、実際は一般的によく起きている現象です。
異常震域が起きる原因
異常震域が起きる原因は、地球の内部にあるプレートと呼ばれる岩盤の性質の違いによるものです。
プレートとは、地殻(地球の表層部)と地殻に近い部分にある固い板状の岩盤のことを指します。
プレートは地球上に約15枚あると言われており、それらは「海洋プレート」と「陸のプレート」の2つに大きく分けることができます。
私たちは、震源から地震波が地表に到達して地面を揺り動かすことで地震の揺れを感じますが、地震波に対して各プレートは次のような性質を持っています。
- 海洋プレート:地震波が減衰しにくい
- 陸のプレート:地震波が減衰しやすい
また、プレートがぶつかり合う場所では通常、陸のプレートよりも海洋プレートの方が重いため、陸のプレートの下に海洋プレートが沈み込んだ状態になっています。
上の図のように沈み込んだ海洋プレートの深い場所が震源であった場合、真上にある地盤や陸のプレートは地震波が減衰しやすいため揺れが小さくなり、地震波が減衰しにくい海洋プレートを通って伝わった遠方では大きな揺れが観測されるという訳です。
結果、震源の真上では震度が小さいにもかかわらず、震源から遠く離れた場所で震度が大きくなるという現象が起こります。
>関連コラム 地震とプレートの関連とは?プレートテクトニクス理論と世界のプレート
異常震域による地震で気を付けるべきこと
では異常震域による地震が発生した場合、通常の地震よりも何か変わった特徴があるのでしょうか。
続いて異常震域で私たちが気を付けるべきことを深掘りしてみたいと思います。
太平洋側の揺れが大きくなりやすい
日本の周辺では、2つの陸のプレートと2つの海洋プレートがぶつかり合っています。
日本周辺で異常震域による地震が起きた場合、震源の真上に伝わる地震波は減衰しやすい陸のプレートを通ります。
一方で地震波が減衰しにくい海洋プレートを通った地震波は、揺れの強さを持ったまま震源から離れた太平洋側に伝わります。
つまり、日本周辺で異常震域による地震が起きた場合は「太平洋沿岸地域に揺れが出やすく大きくなりやすい」という特徴があります。
冒頭でお伝えした2022年11月の三重県南東沖を震源とする地震では、東海地方はあまり揺れが観測されなかったにもかかわらず、関東や東北南部で最大震度4の揺れが観測されました。
また、2007年7月に発生した京都府沖の地震では、日本海を震源として発生した地震にもかかわらず、北海道の太平洋側で最大震度4の揺れが観測されまています。
私たちが気を付けることとして、このように日本海側や離れた場所で発生した地震が太平洋沿岸地域にも伝わってくることがある、ということを知っておく必要があります。
「異常」という言葉に振り回されないようにする
地震大国と言われる日本では連日どこかで地震が発生していますが、前述の通り、異常震域による地震もよく起きているごく一般的な現象とえいます。
そのため「異常」という言葉におびえたり振り回されたりしないよう、通常の地震が起きたときと同じように落ち着いて対応するようにしましょう。
過去にあった異常震域による地震
先ほどお伝えした2022年11月の三重県南東沖を震源とする地震や2007年7月の京都府沖も含めて、過去にも異常震源による地震をいくつかご紹介します。
震度分布図上で、震源地と揺れが大きかった地域の位置関係に注目してご覧ください。
■2007年7月16日 京都府沖の深発地震
■2012年1月1日 鳥島近海の地震
■2016年1月12日 北海道北西沖の地震
■2019年7月13日の奄美大島北西沖の地震
■2019年7月28日 三重県南東沖の地震
■2020年12月1日のサハリン西方沖の地震
このように、いずれも震源を示すバツ印とは少し離れた太平洋沿岸部で、より大きな揺れが観測されていることがわかります。
最後に冒頭でお伝えした2022年11月14日の三重県南東沖の地震の震度分布図をみてみましょう。
■2022年11月14日 三重県南東沖の地震
この地震では、
- 震源の深さ:約350km
- 地震の規模:M6.1
と推定されています。
やはり震央に近い東海地方ではあまり揺れず、少し離れた関東や東北南部で震度4〜3の揺れが観測されていることが見て取れます。
異常震域と巨大地震との関連性は?
ここまで異常震源の特徴や気を付けるべきことについてお伝えしてきました。
異常震源による地震には海洋プレートが大きく関与しているとなると、気になるのが巨大地震との関連性です。
中でも南海トラフ巨大地震は太平洋側での発生が予測されており、関連性が気になるところです。
結論からいうと、現段階では南海トラフ巨大地震と直接的な関連性はないとみられています。
くり返しになりますが異常震域による地震のきっかけは、地下の深い場所で発生する深発地震です。
深発地震の震源は非常に深く地下数百㎞位といわれており、海洋プレートの内部やより深い場所が破壊されて発生すると考えられています。
一方、南海トラフ巨大地震は海洋プレートである「フィリピン海プレート」と陸のプレートである「ユーラシアプレート」同士の、プレート運動によるひずみによって引き起こされる地震です。
そのため地震が起きるそもそものメカニズムが異なるため、南海トラフ巨大地震との直接的な関連性は無いとされています。
また、南海トラフ巨大地震の震源の深さは地下数十㎞位であるため、深発地震の震源とは深さが全く異なる点も関連性がないとされる理由のひとつとなっています。
ちなみに通常、震源が100kmより深い地震では津波の心配はほぼないと考えられているため、異常震域による地震では津波が発生する可能性も小さいといわれています。
まとめ
今回は異常震域による地震について、特徴や気を付けるべき点を中心に、過去の事例や南海トラフ巨大地震との関連性についてお伝えしました。
- 異常震域とは震源から離れたところが大きく揺れる現象
- 特別異常な現象ではない
- 太平洋沿岸部に揺れが出やすく大きくなるケースが多い
- 過去にも多々起きている
- 南海トラフ巨大地震との関連性は現段階でないとされている
こうした特徴や注意点等がありました。
いずれにしても、地震が起きたら震源が遠いからといって他人事として考えるのではなく、震源がどこであっても地震はいつ何時起きるかわからないということを念頭においておくことです。
地震大国日本では異常震源以外にも、南海トラフ巨大地震をはじめ首都直下型地震など、懸念される地震がたくさんあります。
地震は自分事として捉え、普段からできる地震への備えの見直しや実施をすることが大切なのではないでしょうか。
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