【地震と住まい】「揺れ」の種類と地震波|あらゆる揺れへの地震対策とは
地震の発生時、はじめはカタカタと小さな揺れを感じたかと思うと、グラグラっと大きな揺れを感じたことがあるのではないでしょうか。
こうした揺れには「地震波」が関与しています。
今回の記事では地震の揺れの種類と地震波について解説するとともに、あらゆる地震の揺れに対する住まいの地震対策についてお伝えします。
・地震の揺れの種類と地震波について知ることができます。
・あらゆる揺れに対応した地震対策を知ることができます
目次
地震の揺れには「地震波」が関係している
地震が発生すると、震源地で放出されたエネルギーが波の形、いわゆる「地震波」となり広がっていきます。
地震波には地球の内部を伝わる「実体波」と、地球の表面に沿って伝わる「表面波」があります。
表面波は実体波が地表に到達することで引き起こされ、地表の極浅い部分を伝わっていくものです。
そして実体波にはP波(縦波)とS波(横波)が、表面波にはラブ波とレーリー波があります。
実体波 | 地球の内部を伝わる波。P波、S波。 |
表面波 | 地球の表面に沿って伝わる波。ラブ波、レーリー波。 |
実体波であるP波やS波はそれぞれ速さが異なり、中学の理科で学ばれるほど一般的なものでもあります。
また、その性質から緊急地震速報にも利用されています。
一方で表面波であるラブ波やレーリー波は、S波よりもやや速度が遅い地震波で、周波数によって速度が変わります。
これらは最近よく耳にする「長周期地震動」にも関係しています。
私たちが感じる「揺れ」には、とくに実体波であるP波やS波が大きく関与しています。
では次項より、実体波(P波、S波)について詳しくみていきたいと思います。
実体波(P波・S波)とは?
実体波であるP波とS波はそれぞれ縦波、横波とも呼ばれ、次のような特徴があります。
- P波:振動方向と波が伝わる方向が同じ。「縦波」とも呼ばれる。
- S波:振動方向と波が伝わる方向が直交方向。「横波」とも呼ばれる。
P波(縦波)は岩石の伸び縮みの変化が伝わるもので、地球内部の岩石は地震波の進行方向と同じ方向に振動します。
密になる部分と疎の部分を繰り返す粗密波です。
一方、S波(横波)は岩石のねじれの変化が伝わるもので、地球内部の岩石は地震波の進行方向に直角な面内で振動します。
ロープを伝わるうねりのような、せん断波です。
P波はS波より速度が速い
P波の「P」は「Primary(1番目の)」、S波の「S」は「Secondary(2番目の)」の頭文字をとったもので、地殻内部において、P波は約7km/秒、S波は約4km/秒の速度で伝わります。
つまり、P波の方がS波よりも速度が速く、1番目に来るP波と2番目に来るS波という訳です。
実体波(P波・S波)と「揺れ」の種類
では実体波(P波・S波)ではどのような揺れが起こるのでしょうか。
地震が発生すると、「初期微動」と「主要動」という2種類の揺れが起こります。
初期微動とは地震の最初に起こる小さな揺れのことで、主要動とは初期微動に続いて起こる大きな揺れのことです。
そして初期微動を引き起こすのが「P波」であり、主要動を引き起こすのが「S波」です。
初期微動(P波)の揺れはあまり増幅しない高振動な小さい揺れで、揺れとしては弱いです。
一方で主要動(S波)の揺れは表層で増幅し、周波数が建物にも影響するため強い揺れとなります。
したがって、地震の強い揺れによる被害をもたらすのはS波による主要動となります。
揺れを感じる順番としては、地表でまずP波による上下動が体感され、そのあとS波による横揺れが体感されます。
体感する揺れの種類としては、カタカタという小さな揺れを感じた後に、ユサユサもしくはグラグラといった大きな揺れを体感します。
緊急地震速報はP波とS波を利用している
前述したように、気象庁が発表する「緊急地震速報」は、こうしたP波とS波の性質を利用しています。
全国のおよそ700箇所に設置されている気象庁の地震・震度計、約1,000箇所に設置されている防災科研(国立研究開発法人「防災科学技術研究所」)の地震観測網において「P波」をキャッチしたら、瞬時に地震の規模や到達時間を予測します。
そしてそれをS波よりも速い、約30万km/秒の電気信号によって気象庁に伝達され、S波が来る前に緊急地震速報が発表されるのです。
あらゆる揺れに強い住まいにするには?
ではカタカタと揺れる小さな揺れからユサユサ、グラグラと揺れる大きな揺れまで、あらゆる揺れに耐えうる強い住まいにするにはどのような方法があるのでしょうか。
①強い住まいにするには「耐震性」を上げる
ひとつ目はやはり住まいの耐震性を上げることです。
建物の耐震性は、大規模な地震が起こるたびに建築基準法の耐震基準の改正が行われてきました。
特に大幅な改正となったのは1981年に行われた改正で、その後も阪神大震災などのたびに法改正が重ねられ、現在では耐震性の高い住宅が増えました。
新耐震基準といわれている現行の耐震基準では、最低でも次の二つの耐震性があることが必須となっています。
- 中規模(震度5強程度)の地震に対して、建物がほとんど損傷しない
- 大規模(震度6強~7程度)の地震に対して、建物が倒壊しない
つまり、これから新築をする場合は最低でもこれらの耐震性は確保されていることになります。
また、住まいの耐震性を上げるには、2000年に制定された「住宅性能表示制度」に基づくいわゆる「耐震等級」をより高いものにするのもひとつです。
耐震等級は1~3の段階に分けられており、耐震等級3>耐震等級2>耐震等級1の順に性能が高くなっています。
各等級の内容は以下の通りです。
耐震等級1 | 震度6強~7程度の数百年に一度レベルの地震ではすぐに倒壊や崩壊をしない 震度5程度の数十年に一度発生する地震ではすぐに住宅が損傷しない ※現行の建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たしている |
耐震等級2 | 「耐震等級1の1.25倍」の地震が起きてもすぐに建物が倒壊や損壊、損傷しない |
耐震等級3 | 「耐震等級1の1.5倍」の地震が起きてもすぐに建物が倒壊や損壊、損傷しない |
ちなみに耐震等級2からは、長期優良住宅の認定基準となります。
長期優良住宅については下記のコラムもご参考下さい。
既存の住宅であれば、築年数が経過していれば耐震診断を受け、必要であれば耐震補強工事を行うとよいでしょう。
耐震診断、耐震補強工事については下記のコラムをご参考下さい。
②強い住まいにするには「制震」を取り入れる
住まいの耐震性が向上してきている近年、注目されているのが「耐震+制震」です。
制震とは、建物に制震装置を設置して地震の揺れを吸収し抑制する技術のことです。
耐震性を高めると、建物が頑丈になる分、地震によって受けたダメージが蓄積してしまいます。
しかし揺れを吸収して建物へ揺れが伝わるのを軽減する「制震」の技術と組み合わせることで、住まいの構造部へのダメージの蓄積を低減し、耐震性をより長く維持することができます。
つまり、耐震と制震の相乗効果によって、より地震に強い住まいを実現させることができるのです。
耐震性が向上してきている今、耐震性の弱点を補うことができる「制震」の技術もあわせて住宅へ取り入れる「耐震+制震」という方法がスタンダードになりつつあります。
制震装置には通常、制震ダンパーを用います。
制震ダンパーにはいくつか種類がありますが、製品によっては新築だけでなく既存の住宅にも設置できるものがあります。
※制震ダンパーに関する詳細は、詳しい資料の送付や質問の受付をしておりますので、下記のバナーよりお気軽にご請求・お問い合わせください。
まとめ
地震の揺れの種類には、地震波が関与しています。
地震波には実体波と表面波があり、実体波にはP波・S波、表面波にはラブ波・レーリー波があります。
主な地震の揺れに関与する地震波は実体波(P波・S波)で、P波・S波それぞれの速度や揺れの種類が異なるといった特徴があります。
また、気象庁による緊急地震速報は、こうした実体波(P波・S波)の性質を利用して観測・発表されています。
小さい揺れや強い揺れなど、さまざまな地震の種類にも対応した住まいへの地震対策として、耐震性の向上とあわせて制震装置の設置がおすすめです。
住まいの地震対策に欠かせない「制震ダンパー」
住宅に制震の技術を取り入れるには、通常、建物の構造部に制震装置(制震ダンパー)を設置します。
新築だけでなく、最近ではリフォームやリノベーション、耐震工事とあわせて制震ダンパーを設置するケースも増えています。
大事な住まいに設置する制震ダンパーはどんなものでもよいわけではありません。
- 信頼性のあるエビデンスに基づいた性能
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を必ずご確認ください。
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トキワシステムの制震ダンパー「αダンパーExⅡ」は特殊オイルを用いたオイルダンパーです。
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続いて、次の実証実験結果をご覧ください。
耐震工法で建てられた住宅に制震装置『αダンパーExⅡ』 を設置すると、設置前に比べて大きく地震の揺れが軽減されることがわかります。
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