地震で使われる「ガル」「カイン」とは?耐震実験でもよく聞く2語を解説
住宅の耐震化が進む近年、ハウスメーカーの耐震実験等でも「ガル(gal)、」や「カイン(kine)」といった指標を耳にすることが増えたのではないでしょうか。
とくに「ガル」については地震のニュースなどでも用いられていることがあり、
「ガルやカインは地震の何を表しているの?」
と感じている方は多いと思います。
そこでこの記事では、耐震実験や地震関連でよく用いられている「ガル」「カイン」について解説するとともに、過去の主な地震でのガルの数値や、実際に耐震実験でガルを用いて表しているハウスメーカー等の例をご紹介します。
あわせて、耐震と組み合わせて知っておきたいこれからの地震対策についてもご紹介します。
・地震の揺れの種類について知ることができます。
・あらゆる揺れに対応した地震対策を知ることができます。
目次
地震の「ガル」とは
「ガル(gal)」とは最大加速度のことで、地震の揺れの強さを表すのに用いる加速度の単位です。
「加速度」とは単位時間あたりの速度の変化率のことで、ガルを含めて次の単位が一般的に使用されています。
この中でもガルは測地や地球物理学の分野で用いられることが多く、主に地震動の大きさや地震の振動の激しさを表す数値としてよく用いられています。
単位の名称 | 記号 | 定義 |
重力加速度 | G | 地球の重力によって物体が自然落下する時の加速度 |
メートル毎秒毎秒 | m/s2(m/秒2) | 国際単位系 (SI) における加速度の単位 1秒間に1メートル毎秒 (m/s) の加速度 |
センチメートル毎秒毎秒 | cm/s2 | 国際単位系 (SI) における加速度の単位 1秒間に1センチメートル毎秒 (cm/s) の加速度 |
ガル | gal | CGS単位系 における加速度の単位 1gal=1秒間に1cm/s速度が増加することを示す |
表にある通り、ガルは1秒間につき毎秒1cmの速さの変化を生ずる加速度のことで、
1gal=1cm/s2=0.01m/s2
980gal≒1G
となっています。
地震が起きた場合にガルによって加速度の最大値を使って地震動の大きさを表し、数値が大きいほど地震動も大きいものであることがわかります。
ただし、震度には加速度の大きさの他に揺れの周期や継続時間も関わるため、最大加速度が大きい場所ほど震度も大きくなる、とは限りません。
ではなぜ地震の振動の激しさを表す際にガルを用いるのでしょうか。
それは地震が発生した際、地面の揺れよって建物や人間に瞬間的な力、つまり加速度が働くためです。
たとえば自動車に乗っていて、急発進をした時を想像してみてください。
あまりに強くアクセルを踏んで急発進をすると、体が後ろに押されるように感じることでしょう。
これは加速度によるもので、加速の度合いが大きくなればなるほど体感する力も大きくなります。
地震でも同様に、大きな加速度が働けば建物や人に加わる地震動も大きくなります。
地震の「カイン」とは
「カイン」とは地震の大きさ・強さを速度の単位で表したものです。
「ガル」が瞬間的な加速度であるのに対し、「カイン」は加速度に時間を乗じて地震の強さを示します。
同じ加速度でも継続時間が長ければ、速度が増すことになります。
1カインは1秒間に1センチメートル動いたことを意味するため、1カイン=1センチメートル毎秒(cm/s)です。
再び自動車の発進にたとえて考えてみましょう。
発震時にアクセルをぐっと踏んで同じ加速度にした場合でも、どのくらいの時間アクセルを踏み続けたかで、速度や移動距離は変わってきます。
地震でも同じことがいえます。
最大加速度が同じ地震動であっても、建物や人に加わる加速度が継続する時間によって速度が変わってきます。
つまり建物にとっても、地震の速度がどれくらいかは被害などにおいて重要なポイントとなります。
過去の地震での「ガル」の大きさ
では過去に発生した大きな地震において、「ガル」の大きさはどれくらいだったのでしょうか。
参考として、最大震度とともに代表的な地震を一覧にしたものが次の表です。
年 | 地震名 | ガル(gal)の大きさ | 最大震度 |
1995年 | 兵庫県南部地震 | 800ガル | 7 |
2007年 | 新潟県中越沖地震 | 813ガル | 6強 |
2008年 | 岩手・宮城内陸地震 | 4022ガル | 6強 |
2011年 | 東北地方太平洋沖地震 | 2933ガル | 7 |
2016年 | 熊本地震 | 1362ガル | 7 |
2018年 | 北海道胆振東部地震 | 1796ガル | 7 |
2022年 | 福島県沖の地震 | 1233ガル | 6強 |
2022年 | 石川県能登地方の地震 | 606ガル | 6弱 |
この中で2008年に発生した「岩手・宮城内陸地震」では地震市の観測最大加速度が4022ガルと大変大きく、ギネス認定されています。
「ガル」や「カイン」は耐震実験でも用いられている
さて、戸建て住宅を建てる際、建物の耐震性はほとんどの方が必ず確認する項目ではないでしょうか。
多くのハウスメーカーでは耐震実験が行われています。
その際の地震の大きさを示す指標としてガルやカインを使っているところも多くあります。
これからマイホームをお考えの際は、ハウスメーカーが提示している耐震等級などの指標とともに、耐震実験が行われている際はどの程度のガルやカイン、震度に耐えられているのかといった点にも注目してみましょう。
耐震実験にガルやカインを用いているハウスメーカーや、震度等による耐震実験を行っているハウスメーカーの数値と内容を、いくつか例として挙げてみたいと思います。(2023年8月現在)
【耐震実験を実施しているハウスメーカーの内容例】
- 積水ハウス:入力波最大速度「160カイン」で損傷なし
- ミサワホーム:「2000ガル」の振動で損傷なし
- 三井ホーム:加振最大加速度「5115ガル」、加振最大速度「231カイン」、震度7に連続60回耐えた
- 住友林業:最大「3406ガル」に耐えた、震度7×22回、震度4~6×224回の計246回に耐えた
- ダイワハウス:震度7相当を4回連続で受けても新築と同様の耐震性能を維持
- 一条工務店:ガル、カイン、地震波も与えて2年間で253回実施しても強度を保持
- タマホーム:震度7でも耐震性を確保
このように住宅の耐震性を確保・確認するため、さまざまな観点から実験がなされています。
耐震とあわせて取り入れたい「制震」
地震大国日本では政府も主導して建物の耐震性の向上を推進し、結果も出ています。
とりわけ耐震性については1981年の耐震基準の改正以降改正が重ねられ、特に新築の戸建て住宅では耐震性も確保されており、耐震性の高い住宅が増えました。
では前項でお伝えしたように、大きな「ガル」や「カイン」でも耐えられる住宅であれば、安心でしょうか。
実は今、こうした耐震性の高い住宅に、耐震性の弱点を補うことができる「制震」の技術もあわせて住宅へ取り入れる「耐震+制震」という方法がスタンダードになりつつあります。
先に例としてご紹介したハウスメーカーでも、あわせて制震を取り入れているところがほとんどです。
耐震:建物そのものの強度を高めることで地震の揺れに耐えられるようにする技術
制震:建物に制震装置を設置して地震の揺れを吸収し抑制する技術
耐震性は建物が頑丈になる分、地震によって受けたダメージを蓄積してしまいます。
しかし制震と組み合わせることでダメージの蓄積を低減し、耐震性をより長く維持することができます。
つまりそれぞれが持つ技術の長所を活かしつつ弱点を補う相乗効果によって、より地震に強い住宅を実現させることができるのです。
住まいの制震に欠かせない制振装置(制震ダンパー)
住宅に制震の技術を取り入れるには、通常、建物の構造部に制震装置(制震ダンパー)を設置します。
新築だけでなく、最近ではリフォームやリノベーション、耐震工事とあわせて制震ダンパーを設置するケースも増えています。
ハウスメーカーに限らず新築でマイホームを建てる際、制震ダンパーが標準搭載されてない場合でも、制震ダンパーの種類のよっては建築時あるいは建築後に設置することも可能です。
大事な住まいに設置する制震ダンパーはどんなものでもよいわけではありません。
- 信頼性のあるエビデンスに基づいた性能
- 確固たる実績
を必ずご確認ください。
制震ダンパーについて詳しく知りたい方は、資料の送付やご質問の受付をおこなっておりますので、下記バナーよりお気軽にお問い合わせください。
まとめ
今回は地震に関するニュースや指標としてよく使われる「ガル」や「カイン」について解説しました。
ガルは地震の揺れの強さを最大加速度で表したもの、カインは地震の大きさ・強さを速度で表したものです。
これらは住宅など建物の耐震実験等でも用いられており、マイホームなど戸建て住宅を建てる際の、耐震性を知るひとつの指標となります。
また、このように優れた耐震性を維持するためにも、近年は制震ダンパーと呼ばれる制震装置を同時に設置し、耐震と制震の組み合わせでより地震に強い家にする方法がスタンダードとなっています。
制震ダンパー「αダンパーExⅡ」
トキワシステムの制震ダンパー「αダンパーExⅡ」は特殊オイルを用いたオイルダンパーです。
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- コストパフォーマンスの高さ
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次の耐力壁試験の動画をご覧下さい。
続いて、次の実証実験結果をご覧ください。
耐震工法で建てられた住宅に制震装置『αダンパーExⅡ』 を設置すると、設置前に比べて大きく地震の揺れが軽減されることがわかります。
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