耐力壁は大事?筋交いとは?耐震性を高めより地震に強い住宅にする方法とは
戸建ての家を新築するときやリフォームを行う際に、「耐力壁」や「筋交い」という言葉を耳にすることでしょう。
ハウスメーカーや工務店の設計担当者から、
「これは耐力壁だから移動できません」
などというフレーズを聞くこともあるのではないでしょうか。
耐力壁や筋交いは家を構成する部分ですが、耐震性を高めるためにも大事な役割を担っています。
今回のコラムでは「耐力壁」と「筋交い」とは何か、どのような役割を持っているのかについて解説します。
・耐力壁や筋交いとはどういったものでどんな役割があるのかがわかります。
・耐震性の向上とあわせて効果的なおすすめの地震対策がわかります。
目次
「耐力壁」と「筋交い」とは
まずは耐力壁、筋交いとは何なのかそれぞれ解説します。
耐力壁とは
耐力壁とは「たいりょくかべ」や「たいりょくへき」とよばれ、垂直方向あるいは水平方向から加わる力から建物を守るための壁で、一般的に筋交いや耐力面材を用いた壁のことを指します。
垂直方向から加わる力には、
- 建物自体の重さ(固定荷重)
- 屋根に積もる雪の重さ(積雪荷重)
- 人や家具といった移動可能なものの重さ(積載荷重)
- 地震による縦方向の揺れ
などがあります。
また、水平方向から加わる力には、
- 地震による横方向の揺れ
- 台風などの強風による揺れ
などがあります。
耐力壁はこれらの力によって建物が倒壊することがないよう支える壁です。
建築基準法では「建築物は、自重、積載荷重、積雪、地震力、風圧力などに対して安全な構造でなければならない」と定められており、これを満たすために耐力壁を設置します。
また、建築基準法施行では耐力壁の構造について詳細に決められています。
(構造耐力)
第二十条 建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。4 階数が二以上又は延べ面積が五十平方メートルを超える木造の建築物においては、第一項の規定によつて各階の張り間方向及びけた行方向に配置する壁を設け又は筋かいを入れた軸組を、それぞれの方向につき、次の表一の軸組の種類の欄に掲げる区分に応じて当該軸組の長さに同表の倍率の欄に掲げる数値を乗じて得た長さの合計が、その階の床面積(その階又は上の階の小屋裏、天井裏その他これらに類する部分に物置等を設ける場合にあつては、当該物置等の床面積及び高さに応じて国土交通大臣が定める面積をその階の床面積に加えた面積)に次の表二に掲げる数値(特定行政庁が第八十八条第二項の規定によつて指定した区域内における場合においては、表二に掲げる数値のそれぞれ一・五倍とした数値)を乗じて得た数値以上で、かつ、その階(その階より上の階がある場合においては、当該上の階を含む。)の見付面積(張り間方向又はけた行方向の鉛直投影面積をいう。以下同じ。)からその階の床面からの高さが一・三五メートル以下の部分の見付面積を減じたものに次の表三に掲げる数値を乗じて得た数値以上となるように、国土交通大臣が定める基準に従つて設置しなければならない。
引用:「e-gov 法令検索」建築基準法 第二十条
(構造耐力上必要な軸組等)
第四十六条 構造耐力上主要な部分である壁、柱及び横架材を木造とした建築物にあつては、すべての方向の水平力に対して安全であるように、各階の張り間方向及びけた行方向に、それぞれ壁を設け又は筋かいを入れた軸組を釣合い良く配置しなければならない。引用:「e-gov 法令検索」建築基準法施行 第四十六条
筋交いとは
筋交いとは柱と柱の間に斜めに入れる補強材のことで、「筋かい」や「筋違い」と表記されることもあります。
主に在来工法で用いられ、柱と梁に囲まれた長方形の対角線上にいれます。
この長方形の強度が不十分な場合、水平方向から加わる力(地震による横揺れや強風による揺れなど)によって長方形がひし形に変形してしまいます。
そこで筋交いをいれることで、水平方向から加わる力に対抗できるようになり、変形を防止し構造の強度を増します。
筋交いには、
- 1本(斜めに1本入れて補強)
- 2本(2本をクロスさせて補強)
の場合があり、長方形に対して斜めに1本筋交いを入れる場合を「シングル」、2本筋交いを入れて交差させるものを「ダブル」や「たすきがけ」と呼ばれます。
なお、建築基準法では筋交いの基準が設けられており、筋交いと柱・梁・土台等を結合する際は「金物」を使用することが義務付けられています。
(筋かい)
第四十五条 引張り力を負担する筋かいは、厚さ一・五センチメートル以上で幅九センチメートル以上の木材又は径九ミリメートル以上の鉄筋を使用したものとしなければならない。
2 圧縮力を負担する筋かいは、厚さ三センチメートル以上で幅九センチメートル以上の木材を使用したものとしなければならない。
3 筋かいは、その端部を、柱とはりその他の横架材との仕口に接近して、ボルト、かすがい、くぎその他の金物で緊結しなければならない。
4 筋かいには、欠込みをしてはならない。ただし、筋かいをたすき掛けにするためにやむを得ない場合において、必要な補強を行なつたときは、この限りでない。引用:「e-gov 法令検索」建築基準法施行 第四十六条
工法ごとに違う耐力壁の種類
耐力壁にはいくつか種類があり、主に木造住宅では次の二種類に大きく分けることができます。
- 筋交いを入れたもの
- 面材を用いたもの
また、日本の戸建て住宅の約8割は木造住宅と言われており、木造住宅の工法も次の2種類に大きく分けることができます。
- 在来工法(木造軸組工法)
- ツーバイフォー工法(枠組工法)
耐力壁は、住宅の工法によって用いる種類が異なります。
ちなみにRC造(鉄筋コンクリート造)の住宅でも耐力壁は使うので、木造住宅の在来工法、ツーバイフォー工法、そしてRC造の住宅ではそれぞれどのような耐力壁を使うのか見ていきたいと思います。
在来工法(木造軸組工法)の耐力壁
在来工法(木造軸組工法)の住宅では主に「筋交い」を入れた耐力壁を用います。
在来工法(木造軸組工法)とは日本で古くから採用されている工法で、現在でも木造戸建て住宅の多くが在来工法によって建てられています。
壁部分へ斜めに設置された木材の様子は、木造の戸建て住宅の建築現場でよく見かけるのではないでしょうか。
ツーバイフォー工法(枠組工法)の耐力壁
ツーバイフォー工法(枠組工法)の住宅では、「耐力面材」でつくられた耐力壁が用いられます。
ツーバイフォー工法(枠組工法)とは、「2インチ×4インチ」の角材で作られた枠材に面材を取り付けて壁を作り、箱のように組み立てていく工法のことです。
個々の住宅によって違いはありますが、一般的に在来工法(木造軸組工法)よりも耐震性が高いと言われています。
ツーバイフォー工法(枠組工法)では筋交を用いた耐力壁ではなく耐力面材による耐力壁が用いられますが、耐力面材は素材によって、
- 木質系(木材を原料にしたもの)
- 無機質系(木材以外の原料でできたもの)
の2種類に大きく分けることができます。
製品として国の認定を受けた耐力面材は多数あり、特徴の異なる面材を組み合わせたりなどして用いるケースもあります。
RC造(鉄筋コンクリート造)の耐力壁
RC造(鉄筋コンクリート造)の住宅にも、耐力壁は用いられています。
RC造(鉄筋コンクリート造)とは柱や梁といった主要構造部を鉄筋コンクリートで構築している建物構造のことで、一般的に木造よりも強度が高くなっています。
そんなRC造(鉄筋コンクリート造)の耐力壁は、他の壁(非耐力壁)と比較して壁内の鉄筋量が多く壁の厚み大きい壁となっています。
耐力壁と筋交いは耐震面で大事な役割を担っている
ここまでお伝えしたように、耐力壁や筋交いは、建物を垂直方向・水平方向から加わる力から建物を守るために必須です。
特に柱など住宅の構造部は水平方向、つまり横から加わる力に弱いため、それらに耐えられるための耐力壁や筋交いによる強度の補強はとても重要になってきます。
つまり、耐力壁や筋交いは住宅の耐震性を保つという大事な役割を担っています。
耐力壁は配置にポイントがある
建物の耐震性において、耐力壁の数量と配置はとても重要です。
耐力壁の必要な数量や配置については建築基準法によって定められているため、それに基づいて必要な量を適切に配置することで、建物の強度や耐震性が確保されます。
とりわけ耐力壁はバランスよく配置することがポイントで、ただやみくもに耐力壁を増やせばよい、という訳ではありません。
なぜなら耐力壁のバランスが取れていない場合、地震などの揺れによる垂直、または水平方向の力やねじれに建物が耐え切れなくなり、倒壊しやすくなってしまうからです。
平面のバランスだけでなく縦のバランスも考慮しておくことも大事で、上下階で耐力壁の位置をなるべく合わせるようにし、力の伝達をスムーズにしておくことで建物の耐震性・強度が上がります。
こういった配置バランスを考えなければならないため、新築時やリフォーム時には耐力壁のために間取りに制約が生じることもあります。
筋交いの向きも耐震性に関与する
耐力壁に入っている筋交いの向きも、耐震性に関わってきます。
たとえば筋交いが全て同じ向きに入っている場合、一方からの力にのみ対抗力を発揮し、もう一方のちからには対抗力がなくなってしまいます。
そのため筋交いの向きはハの字または逆ハの字にし、交互に変えておく必要があります。
また、向きは1階と2階でハの字または逆ハの字を変えて配置することでよりバランスが取れます。
耐震性だけで安心?「+制震」で住宅万全の地震対策
さて、ここまで耐力壁と筋交いについてお伝えしてきました。
これらによって建物の耐震性は高められています。
そもそも耐震とは建物そのものの強度を高めることで地震の揺れに耐えられるようにする技術のことで、耐震性の向上といった建物への地震対策は、地震大国の日本において避けては通れない問題です。
近年ではこのように耐震性を高めた住宅をさらに安全にするために、「制震」の技術を取り入れるケースが増えています。
制震とは「制震装置(制震ダンパー)の設置によって地震の揺れを吸収し、建物の揺れを抑制する技術」のことを言います。
建物の耐震性は耐震基準の度重なる改正等もあり、年々向上しています。
その一方で、耐震だけでは補いきれない”弱点”も存在します。
詳しくは下記のコラムをご参照ください。
耐震と制震を組み合わせることで、お互いの弱点をカバーするだけでなく、相乗効果によってより安全な地震対策を施すことが可能になります。
制振装置には一般的に制震ダンパーが用いられ、その種類はゴムダンパー、鋼材ダンパー、オイルダンパーなど多岐にわたり、用途によって最適なものをチョイスします。
こうした「耐震性+制震」は、大手ハウスメーカーを始め多くの住宅メーカーや工務店で取り入れられており、標準仕様として制震ダンパーを設置しているハウスメーカーも多くあります。
なお、制震ダンパーに関しては詳しい資料がございます。ご興味のある方は下記のバナーよりお気軽にご請求ください。
まとめ:建物の「耐震性」において耐力壁と筋交いは重要
耐力壁は、筋交いや面材を用いて強くした壁で、地震などの垂直方向・水平方向から加わる力から建物を守るための大切な壁です。
筋交いは、柱と柱の間に斜めに入れる補強材のことで、壁(耐力壁)を構成する長方形が変形し倒壊へつながらないよう補強します。
どちらも建物の耐震性においてとても重要な役割を担っており、設置する量や配置バランス等のポイントを抑えることでより安全な住宅へと導きます。
また、近年は耐震性を高めた住宅に制震ダンパーを設置するという地震対策もニーズが高まっています。
これから家を建てる方、お住まいの家に地震対策を施したい方はぜひご参考下さい。
住まいの地震対策として注目の「制震ダンパー」
法改正等により住宅の耐震化が当たり前となってきている今、耐震化された住宅へ「制震」の技術をとりいれる方法は住宅への地震対策として年々広がりを見せています。
住宅を新築する際はもちろん、リフォームやリノベーションと合わせて制震ダンパーを設置したり、耐震工事と合わせて制震ダンパーを設置するケースも増えています。
制震の力を、平時の今だからこそ、大切な住まいへ取り入れてみてはいかがでしょうか。
制震の技術を取り入れるにはどんな制震装置でもよいわけではありません。
- 確かなエビデンスに基づいた性能
- 確固たる実績
を必ずご確認ください。
制震ダンパー「αダンパーExⅡ」とは
トキワシステムの制振装置である制震ダンパー「αダンパーExⅡ」は特殊オイルを用いたオイルダンパーです。
「αダンパーExⅡ」は東京工業大学・静岡大学・豊田工業高等専門学校・岐阜県立森林文化アカデミーなどの数多くの学術研究機関による性能試験をクリアし、その確かな性能が認められています。
制震ダンパー「αダンパーExⅡ」の特徴を簡単にまとめました。
- 建物の変形を約1/2に低減し、建物の損傷を大幅に軽減する高い性能
- 副資材が不要、半人工以下の簡易施工を実現する施工性の高さ
- 120年の製品保証とメンテナンスフリーの実現による耐久性の高さ
- コストパフォーマンスの高さ
- さまざまな研究機関などで実施した実証実験による信頼性
- 18,000棟以上にもおよぶ採用実績
- 新築へも既存住宅へもフレキシブルに施工可能
次の制震装置付き耐力壁試験の動画をご覧下さい。
続いて、次の実証実験結果をご覧ください。
耐震工法で建てられた住宅に制震装置『αダンパーExⅡ』 を設置すると、設置前に比べて大きく地震の揺れが軽減されることがわかります。
(※radとは、radian(ラジアン:層間変形角を意味する国際単位)の略で、柱の傾きを示し、分母の数字が大きくなるほど実際の傾きは少なくなります。)
このように数ある制震ダンパーの中でもトキワシステムの制震ダンパー「αダンパーExⅡ」は十分な採用実績、きちんとした裏付けに基づいた安心の技術でお施主様のご自宅をお守りします。
大切なあなたの家族を守りたい ―KEEP YOUR SMILE―
いつ起きるかわからない地震。
恐ろしい地震から、誰もが家族や住宅を守りたいと願うものです。
この機会に、ご自宅に制震ダンパーを取り入れてみませんか?
「この住宅には設置できるの?」
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などご質問やご不明な点等ございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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