制震ダンパーの実際の効果を見てみよう|大阪府北部地震でわかったこと
以前は大型建造物やマンションなどで取り入れられることが多かった制震の技術ですが、近年、私たちが住む戸建住宅の地震対策として、耐震とあわせた導入が増えています。
制震の技術を用いるには、一般的に制震ダンパーと呼ばれる制震装置を設置します。
一方で制震や制震ダンパーに関する情報は少なく、実際どれくらい効果があるのかが見えづらい部分もあります。
そこで今回のコラムでは制震ダンパーの効果を数値や動画で見るとともに、「大阪北部地震」の際に実際に制震ダンパーを導入した住宅の地震後の状況をご紹介したいと思います。
これから制震ダンパーの導入をお考えの方、設置を迷われている方、効果を目で見て確かめたい方はぜひご参考下さい。
・制震ダンパーを設置したことによる効果を実際に目で見て知ることができます。
目次
整理しておきたい建物の地震対策「耐震・制震・免震」
住宅などの建物の地震対策には、「耐震・制震・免震」が主要な三本柱として用いられています。
耐震・制震・免震のそれぞれを簡単に説明すると次のようになります。
- 耐震:建物自体の強度を高め、建物が地震の揺れに耐え倒壊や損傷を防ぐ技術
- 制震:制震装置の設置によって地震の揺れを吸収し、建物の揺れを抑制する技術
- 免震:免震装置の設置によって地盤と建物を切り離し、建物に揺れを伝えない技術
耐震は建物の地震対策の基本であり、日本では建築基準法で定められた耐震基準によって、一定の基準以上の耐震性が備わっていることが義務付けられています。
ちなみに現行の耐震基準では、
- 震度6強~7程度の数百年に一度レベルの地震ではすぐに倒壊や崩壊をしない
- 震度5程度の数十年に一度発生する地震ではすぐに住宅が損傷しない
といった、耐震等級1に該当するレベルの耐震性が最低限備わっていることが義務付けられています。
耐震等級とは「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」に基づいて制定された「住宅性能表示制度」において、地震に対する建物の強さ(耐震性)を表す指標のひとつです。
耐震等級は1~3まであり、耐震性の高さは3>2>1の順になっています。
高層ビルなどの大型の建物では、ベースとなる耐震に加えて制震や免震の技術を組み合わせて用いられることがほとんどです。
特にタワーマンションなど高さのある建物では、耐震に加えて免震や制震の技術は欠かせないものとなっています。
一方、戸建住宅においては耐震基準の改正が行われて以降、耐震性の向上が進められてきました。
そして最近では戸建住宅にも耐震にプラスして制震の技術を取り入れる方法が注目されており、大手ハウスメーカー等を中心に用いられるケースが増えています。
免震の技術を取り入れた戸建住宅も一部ありますが、導入コストの高さ、工事規模や施工技術の難易度の高さ等から、あまり一般的に普及していないのが現実です。
制震と制震ダンパー
繰り返しになりますが、制震の技術を戸建住宅へ取り入れるには制震装置を設置するのが最もスタンダードな方法です。
制震とは上の項目でお伝えした通り「地震の揺れを吸収し抑制する技術」で、「東京駅」や「東京スカイツリー」といった大型建造物から、最近では一般の戸建住宅にも用いられています。
制震のメリットとデメリットには、次のような内容が挙げられます。
【制震のメリット】
- 余震など繰り返しの揺れにも効果を発揮する
- 建物に伝わる地震の揺れを低減する
- 上階になるほど効果が高まる
- 地震後のメンテナンスがほとんど不要である
- 免震と比較してコストが安い
- 台風などの強風にも効果を発揮する
- 間取りの制約がほぼない
- 制震装置によっては既存住宅にも設置が可能
【制震のデメリット】
- 建物内部にいた場合、地震の揺れは感じる
- 耐震工法に比べて、若干コストがかかる
- 地盤が軟弱な場合は設置できないことがある
- 制震ダンパーだけでは倒壊が防げない
制震のメリットの中で、特に注目したいのが「繰り返しの揺れに強い」という点です。
耐震にもメリットデメリットがともにありますが、耐震の一番のデメリットとして「繰り返しの揺れに弱い」という点があります。
耐震性が向上している現代の住宅に制震をプラスすることで、こうした耐震の弱点をカバーすることができます。
反対に制震だけでは倒壊が防げない、という制震のデメリットは、耐震によって補うことができます。
つまり耐震と制震を組み合わせることでお互いの弱点をカバーするだけでなく、相乗効果によってより安全な地震対策を施すことができるのです。
南海トラフ地震や首都直下型地震などが懸念される地震大国日本において、住まいをより安全にするために、「耐震+制震」が新たなスタンダードになりつつあります。
<関連コラム> 制震構造とはどんな構造?わかりやすく解説|耐震・免震構造との違いも 耐震に優れた住宅にも「制震ダンパー」が必要なワケ|納得の理由をご紹介 |
制震ダンパーとは
制震装置とは一般的に制震ダンパーのことを指します。
国土交通省が実施した「新築建築物に占める木造建築物の割合(令和3年度着工)」の調査によると、低層住宅(1~2階建て程度の住宅)の83.2%が木造となっています。
木造住宅用の制震ダンパーは、オイルダンパー、粘弾性ダンパー、鋼材ダンパーの3つに大きく分けることができます。
オイルダンパー
オイルダンパーは筒状のシリンダー内にオイル(作動油)を封入した制震ダンパーです。
地震の揺れを受けてピストンが作動し、内部の穴をオイルが通過するときの流体抵抗によって地震の揺れを吸収する仕組みです。
自動車のサスペンション内にあるショックアブソーバーと同じ原理と考えればわかりやすいかもしれません。
オイルダンパーは小さな揺れや繰り返しの揺れにも効果が期待でき、小型化が進んでいるため製品によっては建築時だけでなく後付けも可能です。
粘弾性ダンパー
粘着性高い特殊ゴム、アクリル、シリコンなどを使用したダンパーで、素材が持つ弾力性や伸縮する性質によって地震の揺れを吸収する仕組みとなっています。
粘弾性ダンパーは建築時に耐力壁の内部等に取り付ける大型のものが主流です。
小さな揺れや繰り返しの地震にも効果を発揮しますが、素材の特性上気温の変化の影響を受けやすいため、気候によって劣化スピードに影響が出る点に注意が必要です。
鋼材ダンパー
金属が曲がる時の力を利用して、地震の揺れを吸収する制震ダンパーです。
曲がるときに熱を持つ金属の性質を利用し、地震の揺れを受けると熱エネルギーが揺れを吸収する仕組みです。
比較的安価で、特に大きな地震へ効果を発揮します。
注意点として、小さな揺れには効果が期待できない点と金属疲労に留意する点が挙げられます。
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制震ダンパーの効果を数値や目で見てみよう
では制震ダンパーを設置すると、どれくらい効果があるのでしょうか。
オイルダンパーであるトキワシステムの制震ダンパー「αダンパーExⅡ」を用いた実験結果を用いて見ていきたいと思います。
実験結果①
耐震工法で建てられた住宅に制震ダンパー(αダンパーExⅡ)の設置がない場合と設置した場合とで、建物の変位にどれくらい差が出るかをシミュレーション実験した結果です。
設置前と設置後を比較すると、設置がないものは1/93rad、設置したものは1/182radと大きく地震の揺れが軽減されており、制震ダンパーが地震の揺れを吸収し、建物の損傷を大幅に軽減していることがわかります。
※radとは、radian(ラジアン:層間変形角を意味する国際単位)の略で、柱の傾きを示し、分母の数字が大きくなるほど実際の傾きは少なくなります。
実験結果②
耐震等級2レベルの耐震工法の建物に制震ダンパー(αダンパーExⅡ)を設置し、635ガルの地震波を用いてシミュレーションした結果、柱の変位量が最大55%低減しました。
(※結果は建物形状・プラン・地盤・工法によって異なる場合があります。)
実験結果③
こちらは耐震工法のみの建物と、耐震工法の建物に制震ダンパーを設置した建物の制震性を比較した動画です。
制震ダンパーを設置して制震工法とした場合、映像の通りダンパーが揺れをよく吸収し建物の変形を大幅に軽減していることがわかります。
実験結果④
こちらは耐力壁(筋交い・構造用合板)に制震ダンパーを設置していない場合と設置した場合の、耐力壁試験の動画です。
いずれも制震ダンパーの効果が発揮されていることが、一目瞭然です。
大阪府北部地震直後の「制震ダンパー」を設置していた住宅の様子
続いて実際に「αダンパーExⅡ」を設置していた住宅において、大阪府北部地震が発生したときの被害の様子を写真で見ていきたいと思います。
大阪府北部地震とは
「大阪府北部地震」とは2018年6月18日に大阪府北部を震源として発生した地震です。
マグニチュードや最大震度は次の通り観測されています。
- マグニチュード:6.1
- 最大震度6弱:(大阪市北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市)
また、被害状況は次の通りです。
- 死者:6名
- 負傷者(重傷者含む):462名
- 住宅の全壊:21棟
- 住宅の半壊:483棟
- 住宅の一部破損:6万1266棟
- 床上浸水:3棟
- 床下浸水:3棟
- 地震火災:7件
実際の写真による効果
Zelkova Design株式会社様よりいただいた、制震ダンパー「αダンパーExⅡ」を施工したO様邸の、大阪北部地震直後のお写真をご紹介します。
O様邸のある高槻市は地震当時、震度6弱を観測しました。
まずご覧いただきたいのが外側のブロック塀の写真です。
中身がむき出しになり、ひび割れが起こり、地震の大きさをものがたっています。
一方でO様邸は室外の基礎部分においても、破損、ひび割れは一切見られませんでした。
また、外壁に関しても破損、ひび割れは一切見られませんでした。
続いて地震直後の建物内部のお写真をご覧ください。
①浴室
②ウォークスルークローゼット
③書斎
浴室内のボトルや立てかけていたクロスが倒れていますが、書斎のコーナーにある花瓶は倒れていませんでした。
また、リビング・ダイニングでは
①・②立てかけていたパネルが倒れる
③テーブルが数センチ動く
④空のティッシュケースが落下
が見られましたが、大きな被害はありませんでした。
また、キッチングリルが数センチ程度開きましたが、大きな被害はみられませんでした。
このように、制震ダンパーを設置していたことで地震による建物被害を最小限に抑えることができたことがうかがい知れます。
まとめ
今回のコラムでは、制震ダンパーの効果を実験結果で見るとともに、「大阪北部地震」において制震ダンパーを導入した住宅の地震後の状況をご紹介しました。
私たちの住む一般的な木造の戸建住宅でも、「耐震+制震」はもはやスタンダードになりつつあります。
これから数々の大規模地震が懸念される今、制震ダンパーの設置を検討されてみてはいかがでしょうか。
住まいへ取り入れたい「制震ダンパー」
制震ダンパーは住宅を新築する際はもちろん、リフォームやリノベーションと合わせて制震ダンパーを設置したり、耐震工事と合わせて制震ダンパーを設置するケースも増えています。
制震の技術は耐震性の継続に効果を発揮し、耐震の弱点をカバーする。
そんな制震の技術を住まいへ取り入れてみてはいかがでしょうか。
制震の技術を取り入れるには、どんな制震装置でもよいわけではありません。
- 確かなエビデンスに基づいた性能
- 確固たる実績
を必ずご確認ください。
制震ダンパー「αダンパーExⅡ」とは
トキワシステムの振動計測器メーカーとしての経験と技術が認められ、名古屋の国立研究機関からの要請による「木造住宅専用の振動測定装置」の開発を経て、振動を吸収する技術に特化した「αダンパーExⅡ」を開発しました。
10年以上、そして中部圏(東南海地震警戒地区)を中心に18,000棟の実績があり、おかげさまで東海地域ではナンバーワンの実績です。
また、「αダンパーExⅡ」は東京工業大学・静岡大学・豊田工業高等専門学校・岐阜県立森林文化アカデミーなどの数多くの学術研究機関による性能試験をクリアし、その確かな性能が認められています。
制震装置「αダンパーExⅡ」の特徴をまとめると、次の通りです。
- 建物の変形を約1/2に低減し、建物の損傷を大幅に軽減する高い性能
- 副資材が不要、半人工以下の簡易施工を実現する施工性の高さ
- 120年の製品保証とメンテナンスフリーの実現による耐久性の高さ
- コストパフォーマンスの高さ
- さまざまな研究機関などで実施した実証実験による信頼性
- 18,000棟以上にもおよぶ採用実績
- 新築へも既存住宅へもフレキシブルに施工可能
このような理由から、おかげさまで多くの施主様・工務店様等に「αダンパーExⅡ」が選ばれています。
大切なあなたの家族を守りたい ―KEEP YOUR SMILE―
いつ起きるかわからない地震。
恐ろしい地震から、誰もが家族や住宅を守りたいと願うものです。
「この住宅には設置できるの?」
「取り入れてみたいけれどどうやって設置するの?」
などご質問やご不明な点等ございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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