制振装置は結局いるの?いらないの?メリットとデメリットを徹底解説
一般の住宅においても耐震化が当たり前となった近年、耐震にプラスして制震の技術を取り入れる地震対策が注目されており、大手ハウスメーカーなどを中心に制振装置が用いられています。
制振装置とは建物に制震の技術を取り入れるために設置する装置で、一般的には制震ダンパーのことを指します。
一方で制震装置の詳細はあまり知られておらず、「結局のところ、制振装置って本当にいるの?」と疑問に思われている方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、制振装置は耐震性の維持や耐震の弱点のカバーといった役割を担うため、住宅にとって非常に重要であり必要な装置といえます。
今回のコラムでは制振装置についてメリットやデメリットを詳しくお伝えするとともに、効果的な用い方について解説します。
・制振装置はいるのかいらないのかがわかります。
・制震装置とはどのようなものかがわかります。
・制振装置のメリット・デメリットを知ることができます。
目次
制振装置とはどんな装置?
冒頭でもお伝えした通り制振装置とは建物に制震の技術を取り入れるために設置する装置のことで、通常「制震ダンパー」のことを指します。
建物の構造部に制震装置を取り付けることで建物の揺れを低減し、建物を地震から守ることができるのです。
制振装置の種類
制振装置は次の4つに大きく分類することができます。
【制振装置の種類】
- 層間型
- 境界梁型
- マスダンパー型
- 連結型
一般的な戸建住宅に用いられる制振装置のほとんどは「眉間型」です。
「層間型」の制振装置はさらに使用される素材等によってオイルダンパー、ゴムダンパー、鋼材ダンパーなどに、設置方法によって筋違型、壁型などに分類されます。
オイルダンパー、ゴムダンパーなどの詳細は次のコラムをご参考下さい。
<参考コラム>
制震技術の種類
これらの制振装置に用いられる制震技術は、電力などが意図的に加えられるかどうかによって次の3つに分類されます。
【制震技術の種類】
- アクティブ制震
地震で建物が揺れたときに電力などによる「多くの力」を意図的に加えて、建物の揺れを制御
- セミアクティブ制震
地震で建物が揺れたときに電力などによる「少しの力」を意図的に加えて、建物の揺れを制御
- パッシブ制震
電力などの意図的な力を「加えることなく」地震の力に応じて力を吸収し、建物の揺れを制御
一般的な戸建住宅に用いられる眉間型の制振装置の多くは「パッシブ制震」の技術を用いています。
地震が発生した時電力に頼ることなく揺れを吸収し、建物の揺れを抑制します。
種類 | 内容 | 使用例 | 技術 |
層間型 | 上の層と下の層の間を制震ダンパーによってつなぎ、 地震の揺れに応じて制震ダンパーを変形させて揺れを吸収し 揺れを抑制する制振装置 | 高層ビル 戸建住宅 など | パッシブ制震 セミアクティブ制震 ※主にパッシブ制震 |
境界梁型 | 層間型のように建物の層と層の間ではなく、梁のように水平に 設置する制震装置 | 鉄筋コンクリート造の建物 など | パッシブ制震 |
マスダンパー型 | 建物の最上部など振幅のいちばん大きい箇所に「重り」をつけて、 振幅を相殺して振動を小さくする制震装置 主に風への対策として用いられる | 高層ビル など | アクティブ制震 セミアクティブ制震 パッシブ制震 ※主にアクティブ制震 |
連結型 | 複数の建物と建物を制震ダンパーでつなぐ制震装置 | 隣接する高層ビル など | アクティブ制震 セミアクティブ制震 パッシブ制震 |
<参考コラム>
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「制震」と「耐震」について再確認をしておこう
制振装置をご説明するうえでよく出てくるキーワードとして「制震」と「耐震」があります。
制震と耐震はともに地震対策の技術のひとつです。
日本では建物の地震対策技術として「制震・耐震・免震」の3つを主要柱として取り入れており、建物の大きさや特性によって制震・耐震・免震のいずれか又はすべてを組み合わせて地震に強い建物としています。
現状として、タワーマンションなどの高層ビルや大型建築物ではこの3つの技術が用いられることが多く、一般家庭ではベースとして耐震の技術がとして用いられています。
免震は「免震装置」を用いて土地と建物を切り離し地震の揺れを建物に伝えないようにする技術で、建物に揺れを伝えないという点では非常に優れていますが、装置や工事が大掛かりで費用も高いため、主にタワーマンションなどで用いられている技術です。
制震もかつては高層ビルや大型建築物に取り入れられる技術でしたが、近年は先述の「制振装置」の技術が進み、一般の戸建て住宅でも取り入られるようになってきています。
制震、耐震について、もう少し詳しくみてみましょう。
制震とは
では制震の技術とは具体的にどういうものなのでしょうか。
制震とは「制振装置(制震ダンパー)を設置することで、建物が地震の揺れエネルギーを吸収・抑制する技術」のことで、「制振」と呼ばれることもあります。
先にもお伝えした通り制振装置(制震ダンパー)にはいくつか種類があり、戸建て住宅に用いられる眉間型にはオイルを利用したオイルダンパー、金属の性質を利用した鋼材ダンパー、粘弾性の素材を利用したゴムダンパーなど使用される素材によっていくつか種類があります。
いずれも地震が起きた際に電力などの外部エネルギーを必要とすることなく、地震の揺れのエネルギーを受けて制振装置が変形することによって地震の揺れを吸収し、建物の揺れ幅を小さくします。
耐震とは
制震について語る上では、耐震にことも理解しておかなければなりません。
耐震とは「建物自体の強度を高めることで、地震による建物の崩壊や損傷を防ぐ技術」のことです。
耐力壁を設置したり、筋交いを入れたり、柱と梁の接続部を強固にしたりして建物を頑丈にすることで耐震性を高めます。
これまで日本では耐震基準を設けたり耐震化を進めていくことで、地震による建物倒壊の被害は確実に減少しつつあると言われています。
一方で耐震には何度も繰り返される地震によるダメージが建物に蓄積され、耐震性が劣化してしまうといった弱点もあります。
<参考コラム>
制振装置を設置するメリット
制振装置を設置することによって得られる主なメリットには、次のようなことが挙げられます。
- 余震など繰り返しの揺れにも効果を発揮する
- 建物に伝わる地震の揺れを低減する
- 小さな揺れにも効果を発揮する
- 上階になるほど効果が高まる
- 地震後のメンテナンスがほとんど不要である
- 免震装置と比較してコストが安い
- 制振装置の施工が比較的容易である
- 台風などの強風にも効果を発揮する
- 間取りの制約がほぼない
- 製品によっては既存住宅にも設置が可能
このように制振装置を設置することで得られるメリットはたくさんあります。
制振装置を設置することで建物に「粘り」を持たせることができます。
それによって地震の揺れをよく吸収することで建物の変形や損傷を軽減し、建物にダメージが残っていくこと防ぎます。
制振装置は上の階になるほど効果が高まることも実証されています。
もともと制振装置はタワーマンションや大型商業施設、東京スカイツリーなどといった高層の建物で多く用いられていました。
したがって一般の住宅においても2階、3階などの上階でもより効果を感じることができます。
また、制振装置は施工も比較的容易で基本的に現場の大工さんが設置しますが、制振装置の種類によってコンパクトであればあるほど施工性は高くなります。
製品によっては新築時だけでなくリフォーム時など、既存の住宅へ後から追加で設置することができるものもあります。
ただし大型の制震ダンパーの場合、断熱材への影響が出るケースが多いため確認が必要です。
オイルダンパー等の小型の制震ダンパーでは断熱材への影響がないものが多く、間取りへの制約もほぼみられません。
<参考コラム>
制振装置を設置するデメリット
- 設置には耐震にプラスして若干のコストがかかる
- 地盤が軟弱な場合は設置できないケースがある
- 単体では建物倒壊の防止には十分な効果が発揮できないケースがある
制振装置を設置する際には、装置を取り付けるわけですからやはり若干のコストが発生します。
また、制震装置は耐力壁等の代替となるものではないため、単体で建物の倒壊を防げるといういものではありません。
先でも少しお伝えしましたが、制震ダンパーは揺れを抑えて耐震性能を守ることに優れたいわゆる耐震性の維持にとても効果的な装置です。
そして制振装置が揺れによるエネルギーを吸収することで建物の変形や損傷を軽減し、耐震が苦手とする「繰り返しの揺れ」による建物へのダメージの蓄積を防ぎます。
耐震との組み合わせで高い相乗効果を生み出し、お互いの良さを高めならが弱点をカバーするのです。
<参考リンク>
制振装置の効果的な用い方
ここまで制振装置について、メリットやデメリットを含めてお伝えしました。
繰り返しになりますが、制振装置の効果的な用い方は耐震化された住宅(耐震構造の住宅)と組み合わせて設置することです。
建物自体の強度が高められた耐震工法の建物に制振装置を設置することで、揺れを吸収して建物の揺れを大幅に軽減し、建物の損傷を大きく減らすことができます。
つまり、耐震構造の一番の弱点である「繰り返す揺れ」によるダメージが蓄積することを防ぐことができるのです。
例えばとても堅い物体に対して繰り返し衝撃を与え続けると、いつしかひび割れたり壊れたりします。
しかしそのとても堅い物体が衝撃を吸収する機能を持ち合わせていると考えると、どうでしょうか?
ひび割れたり壊れたりする可能性が飛躍的に低くなることは、容易に想像できると思います。
住宅も同じで、制振装置によって頑丈な建物に粘りを加えることで建物への揺れとダメージを軽減し、耐震性の劣化をも防ぎます。
つまり強い耐震構造の住宅へ制振装置をプラスすることで、より万全な地震対策を行うことができるのです。
まとめ
「耐震+制震」が戸建て住宅の新たなスタンダードになりつつある今、制振装置は住宅にとって大事な役割を担う設備といえます。
今後、南海トラフ巨大地震など私たちが住む日本ではいくつもの大規模地震の発生が懸念されています。
これから新築される方はもちろんすでにご自宅を所有されている方も、あらためて「耐震+制震」の機能を持たせることを検討されてみてはいかがでしょうか。
耐震構造と併用して高い効果を発揮する「制震ダンパー」
お伝えしたように、法改正等により住宅の耐震化がすすめられもはや常識となってきている今、住宅への地震対策として耐震化された住宅へ「制震」の技術をとりいれる方法が新たなスタンダードとして注目されています。
制震の技術を取り入れるには、どんな制振装置でもよいわけではありません。
- 確かなエビデンスに基づいた性能
- 確固たる実績
を必ずご確認ください。
トキワシステムの制振装置 制震ダンパー「αダンパーExⅡ」とは
トキワシステムの制振装置である制震ダンパー「αダンパーExⅡ」は特殊オイルを用いたオイルダンパーです。
トキワシステムの振動計測器メーカーとしての経験と技術が認められ、名古屋の国立研究機関からの要請による「木造住宅専用の振動測定装置」の開発を経て、振動を吸収する技術に特化した「αダンパーExⅡ」を開発しました。
10年以上、そして中部圏(東南海地震警戒地区)を中心に18,000棟の実績があり、おかげさまで東海地域ではナンバーワンの実績です。
また、「αダンパーExⅡ」は東京工業大学・静岡大学・豊田工業高等専門学校・岐阜県立森林文化アカデミーなどの数多くの学術研究機関による性能試験をクリアし、その確かな性能が認められています。
制振装置「αダンパーExⅡ」の特徴をまとめると、次の通りです。
- 建物の変形を約1/2に低減し、建物の損傷を大幅に軽減する高い性能
- 副資材が不要、半人工以下の簡易施工を実現する施工性の高さ
- 120年の製品保証とメンテナンスフリーの実現による耐久性の高さ
- コストパフォーマンスの高さ
- さまざまな研究機関などで実施した実証実験による信頼性
- 18,000棟以上にもおよぶ採用実績
- 新築へも既存住宅へもフレキシブルに施工可能
次の制震装置付き耐力壁の実験動画をご覧ください。
続いて、次の実証実験結果をご覧ください。
耐震工法の建物に制振装置「αダンパーExⅡ」を設置すると、建物形状やプラン・地盤・工法によって異なる場合もありますが、最大で柱の変位量が55%低減しました。
また、小さな揺れでも効果を発揮していることもわかります。
このように数ある制震ダンパーの中でもトキワシステムの制震ダンパー「αダンパーExⅡ」は十分な採用実績、きちんとした裏付けに基づいた安心の技術でお施主様のご自宅をお守りします。
大切なあなたの家族を守りたい ―KEEP YOUR SMILE―
いつ起きるかわからない地震。
恐ろしい地震から、誰もが家族や住宅を守りたいと願うものです。
トキワシステムの制震ダンパー「αダンパーExⅡ」は、耐震化された住宅の弱点を補いつつ、建物の倒壊防止に効果を発揮します。
「この住宅には設置できるの?」
「取り入れてみたいけれどどうやって設置するの?」
などご質問やご不明な点等ございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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