制振ダンパーの仕組みをタイプ別に解説します
地震の多い日本では地震への備えが必要不可欠です。しかし、建築基準法の耐震基準を満たしていても、十分な地震への備えにはならない場合が多いのが実際です。多くの住宅で「制振ダンパー」を木造住宅等に設置することで、耐震対策と制振対策を両立させ、より高い安全性を確保する取り組みが始まっています。では、その鍵となる制振ダンパーはどのような仕組みで住宅の安全性を高めているのでしょうか?今回はその仕組みをタイプ別に解説します。
・制振ダンパーの仕組みを解説します。3タイプありそれぞれ仕組みが異なります。
・制振ダンパーが地震対策にどのように有効か、その仕組みを解説します。
目次
制振ダンパーの仕組みと特徴
では制振ダンパーの仕組みと特徴を確認していきましょう。木造住宅用の制振ダンパーには3つのタイプがあり、それぞれの特徴と仕組みが異なります。
オイルダンパーの仕組みと特徴
シリンダーのような筒状の容器の中に注入されたオイルが揺れを吸収する制振ダンパーです。揺れを受けるとピストンが作動して、筒状の容器に開けられた穴からオイルが移動してオイルの溜まっている場所のバランスが変わり、圧力が生まれます。
オイルが通る穴の大きさや形状、オイルの粘着度合いによって、ピストンの作動状態が変わり、その結果、地震の揺れを吸収する効果の高さが変わるという複雑な仕組みです。このような構造によって、住宅を地震や揺れによるダメージを軽減する仕組みになっているのです。
オイルダンパーには、他の2つの制振ダンパーとは違う特徴があります。
コンパクトである
サイズが小さいので、新築時には間取りや設計に影響なく取り付けができ、リフォーム時には一部の壁を取り壊すだけで取り付けができる手軽さがあります。
小さな地震にも反応する
地震以外の小さな揺れも吸収する為、小さな揺れによって蓄積する目に見えない住宅へのダメージを防ぎます。粘弾性ダンパーにも同じ特徴がありますが、鋼材ダンパーは大きな揺れにしか反応しません。
粘弾性(油圧式)ダンパーの仕組みと特徴
ゴムやシリコンなどを使い、素材の持つ弾力性によって地震の揺れを吸収する仕組みの制振ダンパーです。
温度の影響を受ける
素材の性質上、暑さや寒さによって伸びたり縮んだりする為、地域の気候や素材の配合によって効果の高さが変わったり、劣化の速度が早まったりする恐れがあります。
サイズが大きい
鋼材ダンパーもそうなのですが、サイズが大きい為、設計や間取りに影響が出ることがあります。リフォームの場合には、壁を剥がす範囲が拡がります。
鋼材(金属)ダンパーの仕組みと特徴
曲がるときに熱を持つ金属の性質を利用し、地震の揺れを受けると熱エネルギーが揺れを吸収する仕組みの制震ダンパーです。
小さい揺れには反応しない
オイルダンパーと粘弾性ダンパーは、小さな揺れにも反応するのですが、金属は一定以上の力が加わらないと折れ曲がりが始まりません。
その結果、小さな揺れには反応しません。また、大きな揺れを繰り返し受けると、金属疲労によって折れてしまう恐れもあります。
サイズが大きい
粘弾性ダンパーもそうなのですが、サイズが大きい為、設計や間取りに影響が出ることがあります。リフォームの場合には、壁を剥がす範囲が拡がります。
関連コラム:制振ダンパーは意味ない?制振の効果と必要性を徹底検証
地震対策として耐震以外に制振が必要な理由
耐震とは地震に耐える力です。耐震の性能の高さに応じ、略して品確法と呼ばれる「住宅の品質確保の促進等に関する法律」によって耐震等級が定められています。
外観や内装、間取りなどとは違って、耐震性は目で見て確かめることができません。その為、専門的な知識がない人であっても、その住宅の耐震性の高さを確認できるよう定められている基準です。 耐震等級は1から3までの段階に分けられています。
耐震等級1は最低限これだけは備えていなくてはならないという基準であり、この基準を満たしていれば、建築基準法の耐震性能を満たしているということになります。
地震で被害を受ける可能性は大きいです。耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍、耐震等級3は耐震等級1の1. 5倍の耐震性能です。
ただ、この等級だけでは耐震性の高さの表し方としては不十分です。なぜなら許容応力度計算という複雑な構造計算をした上で設計された家と、簡易な壁量計算だけがされた家、又は構造計算が全くされていない家とでは、同じ等級でも耐震性能に違いが出てくるからです。
地震対策の基本は耐震ですので、制振で地震への備えを強化するとしても、まずは耐震性を確実にすることが大切です。
新築の場合は複雑な構造計算をした上で設計建築がされる家にする、リフォームの場合は耐震補強をするといった方法で耐震性は高められます。
それでは、そこまで耐震性を高めても、地震対策としては不十分なのはなぜなのでしょうか?その理由は、耐震とは地震に耐える力だからです。
地震に耐えるだけなので、地震から受けるダメージを軽減する働きはありません。一方、制振とは揺れを吸収する力であり、その仕組みがあるのです。
同じ耐震性を持った住宅が地震の揺れのダメージを100%受けた時と、制振によって軽減されたダメージを受けた時では、地震による家への影響の大きさが変わります。さらに地震は1回だけではありません。余震が来ることもあれば、数か月、数年して別の地震が発生することもあります。
1回目の地震では目に見える被害がなくても、目に見えない部分で揺れによる影響を受けているかもしれません。1回目の地震で100パーセントのダメージを受けた家と揺れが吸収されてダメージが軽減された家とでは、見た目は同じでも受けた影響が違います。
そして数年後にまた地震が起きた時、大きく影響を受けた家と少ししか影響を受けなかった、又は全く影響を受けなかった家では、耐震性そのものの高さがすでに変わってしまっています。
加えて2回目の地震でも制振していない家は100%のダメージを受けるので、より家に加わる負担が大きくなってしまいます。
一方、制振をしている家では1回目の地震から揺れが吸収されているので、耐震性が低下しません。2回目の地震が来た時、新築時と同じだけの耐震性が保持されている上に、2回目の地震のダメージも抑えられます。
日本は地震の多い国です。幸いなことに余震が来なかったとしても、数か月、数年後にはまた別の地震が発生します。
その度毎に地震の揺れが吸収される家と100パーセントの揺れを受ける家では、長い目で見ると、住宅の耐久性は全く変わっていきます。
- 国土交通省 気象庁 地震の活動状況
- 国土交通省 気象庁 地震について
- 内閣府 地震の発生と被害状況
頻発する小さな地震であっても、目には見えない住宅への被害を生み出していることは知っておいた方が良いでしょう。
地震が起こす問題は倒壊や崩壊などの大きな問題だけではありません。 地震の揺れは徐々に住宅が歪ませ、出入り口の開閉がし難くするなど、日常生活に差し障りの出るような小さな問題も発生させます。
制振ダンパーは大地震での倒壊や崩壊を防ぐだけではなく、このような仕組みによって揺れによる目に見えない住宅の歪みによる暮らし難さも防いでくれるのです。
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選ぶべき制振ダンパーはオイルダンパー
これまで解説してきたように、制振ダンパーの3つのタイプには、それぞれが独自に持つ特徴と共通する良さがあります。
- コンパクトで設置がしやすく間取りに影響しない オイルダンパー
- 小さな揺れから大きい揺れまで吸収する オイルダンパー・粘弾性ダンパー
- 折れたり気温の影響を受けて劣化したりせず耐用年数が長い オイルダンパー
簡単に比較してみると、いかにオイルダンパーが優れているかということが分かります。
木造住宅に使える3タイプの制振ダンパーの中で、①制振効果が高い、②設置がしやすい、③耐用年数が長いという3つの点を満たす制振ダンパーはオイルダンパーです。
耐震だけでは地震からの被害を完璧に避けることはできないので、制振での地震対策が必要です。新築時、リフォーム時には、耐震性を高めるだけではなく、同時に制振についても検討することが、家族の命と財産を守ることに繋がります。
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多くの研究機関で実証
「αダンパーExⅡ」は、東京工業大学・静岡大学・豊田工業高等専門学校・岐阜県立森林文化アカデミーなどの数多くの学術研究機関による性能試験をクリアして、その効果が認められています。
16,000棟を超える導入実績
「αダンパーExⅡ」は、木造住宅用の油圧制震ダンパーとして信頼と実力No.1で、16,000棟以上の供給実績があります。これからもより多くのお住まいを地震や自然災害から守り続けていきます。
グッドデザイン賞を受賞
制震装置「αダンパーExⅡ」は、2021年度グッドデザイン賞(主催:公益社団法人日本デザイン振興会)を受賞いたしました。
低コストで高い効果
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