相模トラフ巨大地震とは?過去の記録やこれからの可能性を知っておこう
地震に対する様々な情報が増えている昨今、「トラフ」という言葉を聞く機会は多々あると思います。
よく耳にするのは南海トラフ沿いを震源とする「南海トラフ巨大地震」ですが、実は「相模トラフ」沿いを震源とする「相模トラフ巨大地震」もあるのはご存知でしょうか。
「相模トラフ」とは関東地方の南沖に位置する海底地形で、「相模トラフ巨大地震」は首都直下地震と並んで関東地方で懸念されている地震です。
そこで今回のコラムでは「相模トラフ巨大地震」に注目し、過去に起きた相模トラフ巨大地震や今後の見通しについてご紹介します。
・相模トラフとはどこにあり、どのようなものかを知ることができます。
・相模トラフ巨大地震について、過去や見通しについて知ることができます。
目次
相模トラフとは
まずは「相模トラフ」についてご説明します。
相模トラフとは先述の通り関東地方の南沖に位置する海底地形と、それに由来する沈み込み帯(プレートが沈み込む場所)のことをいいます。
相模トラフは図のように 「フィリピン海プレート」が「北アメリカプレート」の下に沈み込んでいますが、 「フィリピン海プレート」 の下には東側から「太平洋プレート」が沈み込んでおり、このエリアの地下構造はとても複雑になっていることがわかります。
過去に起きた「相模トラフ巨大地震」とは
このような複雑なエリアとなっている相模トラフ付近では、マグニチュード7レベルの地震が多発しています。
相模トラフ沿いを震源とする巨大な地震のことを総称して「相模トラフ巨大地震」と呼ばれています。
「相模トラフ巨大地震」 は過去に1703年の「元禄関東地震」、1923年の「大正関東地震(関東大震災)」があり、両者ともマグニチュード8を超えるレベルの巨大地震でした。
ではそれぞれを詳しくみてみましょう。
①1703年の元禄関東地震
1703年に起きた「相模トラフ巨大地震」は「元禄関東地震」 と呼ばれており、1703年(元禄16年)11月23日の午前2時頃に発生しました。
元禄地震、元禄大地震、元禄の大地震と呼ばれることもあります。
震源は房総半島南~千葉県の野島崎付近にあたる相模トラフ沿いで、 マグニチュードは推定7.9~8.5です。
神奈川県の各所で震度7レベルの地震、東海道エリアを中心に広範囲にわたって震度4以上の地震が記録されており、震度3前後の物を含めると、京都や奈良などの関西から東北の青森県までで地震が観測されています。
ただし、地震の測定や記録のシステムが現代ほど整っていない古い時代の記録に基づくもののため、不確定性もあるためあくまでも「推定」の要素が強いものとなります。
被害状況
1703年の相模トラフ巨大地震である「元禄関東地震」で被害が大きかったのは、相模灘沿いや房総半島南部と記録されています。
特に神奈川県の小田原城下では地震後に小田原城の天守も焼失するほどの大火災が発生し、小田原領内では倒壊家屋が約8,000戸、死者は約2,300名にのぼると言われています。
東京ではそれほど被害が大きくなく、江戸城(現皇居)の諸門や番所をはじめ、長屋や町屋などの建物倒壊による被害にとどまったようです。
平塚と品川では液状化現象が記録されています。
関東全体では多くの火災が発生し、被災者は推定約37,000名です。
この「元禄関東地震」によって、関東各箇所で地殻変動が起き、場所によっては0.7~5mの隆起があったことが記録されています。
②1923年の大正関東地震(関東大地震)
1923年に起きた「相模トラフ巨大地震」は「大正関東地震(関東大地震)」 と呼ばれており、 1923年(大正12年)9月1日午前11時58分に発生しました。
この地震が引き起こした災害の総称として、いわゆる「関東大震災」と呼ばれています。
各機関によって誤差はあるものの、 マグニチュードは 約7.9~8.3と推定されています。
震度に関しては、当時の中央気象台(現在の気象庁)では震度7の設定がなかったため、最大でも震度6との記録となっています。
後の解析により、神奈川県を中心に相模湾岸や房総半島南部、東京都でも東京湾沿岸などで震度7に達していたと推定されています。
当時の震度は次の通りです。
【震度と各都市名】 | |
震度6 | 熊谷・布良・東京 ・横須賀・甲府 |
震度5 | 宇都宮・銚子・長野・飯田・沼津・浜松・宮津 |
震度4 | 福島・水戸・筑波山・足尾・前橋・松本・伏木・福井・名古屋・彦根・大阪・堺・徳島 |
震度3 | 石巻・八丈島・高田・新潟・金沢・高山・津・八木・和歌山・松山・熊本 |
震度2 | 函館・秋田・山形・京都・豊岡・岡山・広島 |
震度1 | 潮岬・浜田・多度津 |
被害状況
1923年の相模トラフ巨大地震である「関東大地震」では東京都と神奈川県を中心に、南関東から東海地域に及ぶ広い範囲の地域で被害が発生しました。
具体的な数字は次の通りです。
- 死者・行方不明者数:105,385名
- 全潰住戸:109,713戸
- 半潰住戸:102,773戸
- 焼失住戸:212,353戸
- 流失埋没住戸:1,301戸
近代化して人口が集中していた東京都では、建物倒壊による被害のほか地震火災による被害も深刻で、多くの死傷者が出ました。
また、東京都よりも被害が深刻であった神奈川県では建物倒壊による被害のほか、液状化による地盤沈下、崖崩れ、沿岸部では津波による被害が発生し、それに伴う鉄道事故で100名以上の死者、土石流で数百名の犠牲者が出ています。
甚大な津波被害も発生していた
「関東大地震」では太平洋沿岸地域から伊豆諸島にかけて、 さらには東北地方から九州地方にかけての太平洋沿岸でも津波が観測されています。
静岡県熱海市で6m、局地的に12m、千葉県館山市で9.3m、神奈川県の鎌倉由比ヶ浜では局地的に9m、その沿岸では5~7mといった高さの津波が観測されています。
津波の高さもそうですが、注目すべきは津波が到達するまでの時間の速さです。
熱海市では地震発生後およそ5分で引波が起きたのちに第1波が襲来、鎌倉では地震直後に大きく潮が引き、その後10分程度で第1波が襲来したと記録されています。
その数分後に第2波が襲来したケースも多く、 第1波よりも高い津波も記録されています。
各地で津波による行方不明者も多く出て、特に鎌倉市由比ケ浜では300名前後の行方不明者となっています。
一瞬にして何もかもを飲み込んでしまう恐ろしい津波。
私たちは津波に対する知識も再確認して準備しておきたいところです。
相模トラフ沿いで巨大地震はまた起きる?
過去に起きた「相模トラフ巨大地震」では、多数の死者や行方不明者、建物倒壊、鉄道等のライフラインの崩壊など深刻な被害をもたらしたことがわかりました。
では今後「相模トラフ巨大地震」が起きる可能性はあるのでしょうか?
地震防災対策の強化のために文部科学省に設置された、政府の特別の機関である「地震調査研究推進本部事務局」によると、相模トラフ沿いでマグニチュード8クラスの巨大地震が発生する確率について、次のように示しています。
これは「0~」となっているの安心という意味ではなく、起こりうる可能性があることを示しています。
そのため政府でも、現在様々なデータに基づいて分析や予測を行って対策に取り組んでいます。
まとめ
「南海トラフ巨大地震」の発生が危惧される昨今ですが、「相模トラフ巨大地震」が発生する可能性も少なからずあります。
日本中、どこであっても大きな地震に遭遇する可能性がある、ということを示しているのではないでしょうか。
過去にどんな被害がもたらされていたのかもよく把握して、私たちは巨大な地震に対する備えを行っておく必要があります。
そして私たちにできる地震への備えを行い、いつ地震が来ても慌てないようにしておきたいものです。
新築既存を問わずできる住宅への地震対策「制震ダンパー」
地震による住戸損壊は全壊・半壊・一部損壊を含め、「相模トラフ巨大地震」に限らず多くの地震でみられる被害です。
あらためて、住宅への地震対策を見直してみてはいかがでしょうか。
近年は住宅への地震対策は耐震化の推進や技術的な進歩に伴いって飛躍的に向上していますが、昨今注目されているのが、耐震化された住宅へ「制震ダンパー」を設置する方法です。
制震ダンパーとは、「地震による揺れを吸収して振動伝達量を抑えるための装置」です。
制震ダンパーには 素材や形状の違いから、オイルダンパー、ゴムダンパー、鉄鋼ダンパーなどいくつかの種類と特徴があり、住宅へ制震ダンパーを設置することで建物の揺れを低減し、建物を地震から守ることができます。
<参考コラム>制震ダンパーは効果や種類を検討し最適なものを設置しよう
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耐震工法で建てられた住宅に制震ダンパー「αダンパーExⅡ」を設置することで、柱の変位量が最大55%低減できることがわかります。
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