耐震改修促進法とは?必ず知っておきたい建築に関する法律とその内容
建物や住宅の耐震に関する法律は、建築基準法を始め様々あります。
その中でも今回は「耐震改修促進法」に注目し、内容についてご紹介します。
・耐震改修促進法とは、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」のことです。
・耐震改修促進法は今日まで2回改正されています。
目次
耐震改修促進法とは
耐震改修促進法とは「建築物の耐震改修の促進に関する法律」のことで、1995年(平成7年)10月27日に施行されました。
同1995年(平成7年)1月17日に、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)が発生しています。
その時の被害は甚大で、死者6,434人、建物の全半壊被害は約24万9千棟強にものぼりました。
また、亡くなった方の87.8%が建物や家具などの倒壊による圧迫死で、その大多数が古い木造住宅であったとされています。
建物の倒壊等の被害に関しても、現行の新耐震基準(1981年(昭和56年)施行)以前に建築された建物に被害が多くみられたと建築震災調査委員会によって報告されています。
このような被害状況を教訓に、耐震改修促進法は次のような目的で制定されました。
この法律は、地震による建築物の倒壊等の被害から国民の生命、身体及び財産を保護するため、建築物の耐震改修の促進のための措置を講ずることにより建築物の地震に対する安全性の向上を図り、もって公共の福祉の確保に資することを目的とする。
引用:国土交通省「建築物の耐震改修の促進に関する法律」
耐震改修促進法では、多くの人が集まる建築物(学校、病院、事務所、商業施設など)において、現行の耐震基準に適合しない建築物の所有者は耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修を行うよう努力することが義務付けられました。
また、耐震診断や耐震改修を促進するために、建築基準法の特例等も規定されました。
耐震改修促進法は改正されている
兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)のあった年に制定された「耐震改修促進法」は、その後2回の改正を経て現在に至っています。
それぞれの改正では次のようなポイントが盛り込まれました。
平成18年の「耐震改修促進法」改正のポイント
平成7年に耐震改修促進法が施行されたのち、平成18年に改正が行われています。
平成18年の耐震改修促進法改正のポイントは次の通りです。
①計画的な耐震化の促進
まず、国と地方公共団体の両方で「計画的な耐震化の促進」が図られました。
国は「基本方針」を作成し、耐震化の具体的な数値目標、技術指針や啓発・知識の普及などを盛り込みました。
地方公共団体では都道府県内の「市町村耐震改修促進計画」を作成し、公共建築物の速やかな耐震診断と結果の公表、整備プログラムの策定等が追加されています。
また、道路閉塞や地震防災マップの整備、耐震診断や改修の促進、所有者への指導などの施策や考え方も取り入れられました。
②建築物の所有者等に対する指導等の強化
地方公共団体の市町村耐震改修促進計画に盛り込まれている「建築物の所有者等に対する指導等の強化」では、主に次のような改正が行われました。
- 指示等の対象に幼稚園、小中学校、老人ホーム等を追加
- 追加対象建物の規模要件の引き下げ及び指導等の対象の拡大
- 指示等の対象に危険物を取り扱う建築物等を追加
- 道路を閉塞させる住宅等に指導、助言を実施
- 地方公共団体の指示に従わない特定建築物を公表
- 倒壊の危険性の高い特定建築物については建築基準法により改修を命令 等
③耐震化の支援制度を充実
耐震化に伴う支援制度に関して、 従来の耐震改修促進法で定められていた認定対象の拡充などが追加されました。
主な内容は次の通りです。
- 耐震改修計画の認定により受けられる特例について、対象となる耐震改修工事を拡大
- 耐震改修支援センターによる耐震改修に係る情報提供等
- 耐震改修促進税制の創設及び固定資産税額の一定期間の減額 等
平成25年 の「耐震改修促進法」改正のポイント
耐震改修促進法は平成25年にも、建築物の地震に対する安全性をより向上させるために一部改正されました。
平成25年に行われた改正の大きなポイントは次の2つです。
①大規模建築物等に係る耐震診断・結果報告の義務付け
平成25年の耐震改修促進法改正の一番大きなポイントとしては、大規模建築物などに対して、耐震診断の実施と結果を報告しなければならないと義務付けがなされた点が挙げられます。
大規模建築物等とは主に
- 要緊急安全確認大規模建築物
- 要安全確認計画記載建築物
と定められています。
対象となった上記に関しては、後ほど改めてご説明したいと思います。
また、避難路沿道の一定規模以上のブロック塀に対しても、耐震診断の実施や診断結果の報告が義務付けられました。
②耐震改修円滑化のための新制度の制定
平成25年の耐震改修促進法では耐震改修計画の認定制度に関する基準の緩和や特例措置など、新たな耐震改修がよりスムーズに行えるよう新制度がいくつか制定されました。
主な内容は次の通りです。
- 耐震改修計画の認定基準の緩和・特例の設置
- 耐震性に係る表示制度の創設
- 区分所有建築物の耐震改修の必要性に係る認定
耐震計画の認定基準の緩和として増改築の工事範囲の制限を撤廃し、増築に係る容積率・建ぺい率の特例措置が講じられたことによって、増築を伴う耐震改修工事も認定対象となりました。
耐震診断・報告が義務付けられた建物とは?
平成25年の耐震改修促進法改正によって、耐震診断および結果報告が義務付けられた「要緊急安全確認大規模建築物」と「要安全確認計画記載建築物」とは、具体的にどのような建物なのでしょ
要緊急安全確認大規模建築物
要緊急安全確認大規模建築物とは、次の3つが該当します。
・不特定多数が利用する大規模建築物
病院、店舗、旅館、図書館、体育館など
・避難確保上、特に配慮を必要とする人々が利用する大規模建築物
保育園、幼稚園、学校、老人ホームなど
・火薬類、石油類、その他危険物を一定以上貯蔵または処理している大規模な貯蔵場等
要安全確認計画記載建築物
要安全確認計画記載建築物とは、基本的に都道府県や市町村などの地方公共団体が耐震改修促進計画によって定めているもので、大きく2つに分けられます。
・緊急輸送道路等の避難路沿道建築物
緊急輸送道路とは、災害直後より避難・救助・物資供給等の応急活動のための緊急車両の通行を確保する重要な路線のことをいいます。
緊急輸送道路は都道府県や市町村によって指定されています。
その緊急輸送道路沿いにあって、一定以上の高さのもので万が一倒壊した場合にその道路を塞ぐ恐れのある建築物が避難路線道建築物です。
・防災拠点建築物
防災拠点建築物とは、都道府県が指定する庁舎、病院、避難所となる学校・体育館・ホテル・旅館などの建築物のことをいいます。
支援制度はあるの?
このように耐震改修促進法によってあらゆる建築物の耐震性の向上を進めている中で、耐震改修に関する支援も拡充されています。
令和3年度現在、国による支援制度は次の通りです。
住宅・建築物安全ストック形成事業
住宅や建築物に対して、「耐震診断」「補強設計等」「耐震改修の建替え又は除却」を行うことで条件に合致した場合、それに応じた交付金が支給されます。
地域防災拠点建築物整備緊急促進事業(建築物耐震対策緊急促進事業)
先述の平成25年の改正耐震改修促進法によって、耐震診断の義務付け対象となった建築物等の耐震化に対して、重点的・緊急的に支援が行われます。
令和3年度の予算では国費140億円が充てられています。
耐震改修促進税制(住宅・建築物)
耐震改修工事に係る工事費用のうち、上限を定めた額が所得税から控除されます。
また、条件に合わせて固定資産税額が減額がなされます。
住宅金融支援機構による融資制度
個人およびマンション管理組合向けに、耐震工事費用の融資制度が設けられています。
まとめ:日本では国を挙げて耐震化を進めている
深刻な被害をもたらす大きな地震の多い日本では、国を挙げて建築物の耐震化が進められています。
新築の住宅や建築物に対してはもちろん、既存の住宅や建築物に対しても耐震化が進むよう、法改正や支援制度の拡充等が行われています。
なお、支援に関しては国の支援制度とは別に地方公共団体による補助制度も設けられています。
私たちはこうした国や地方自治体の動きを知っておくとともに、私たちにできる地震対策も日頃から行っておくよう、意識を高めておくことが必要です。
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